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08:無添加の石けんは洗濯には力不足 ~無添加商法にご用心

洗剤や家電のメーカーの幹部の人たち(ほとんどが男性)と話をしていて驚くことがある。
洗濯の方法や洗濯機の使い方の話になると、「うちは奥さんがやっているから」とのことで、話はほとんど進まない。

要するにモノは作るが、使ってはいない、ということのようだ。
洗濯もしたことがないのでは。
だから、以下のようなヘンな売り文句が堂々と出回るのではないだろうか。

「無添加にこだわった洗濯用石けん。
赤ちゃんや肌の敏感な方の衣類にもお使いいただけます」

「天然植物油脂を主原料とし、炭酸塩、香料、防腐剤等一切添加物は不使用。
絹やウール洗いに赤ちゃんの肌着や、肌の弱い方のお洗濯にお使い下さい。」

なぜヘンなのか

絹やウール洗いには、通常「おしゃれ着用洗剤」といわれる、繊維が傷みにくいように作られた、洗浄力が劣る洗剤が推奨されます。

洗浄力の劣る洗剤でミルクの吐き戻し、おしっこやうんちで汚れた赤ちゃんの肌着や布おむつの汚れがきれいに落とせるのだろうか。

汚れ落ちの劣る、すなわち汚れが十分に落としきれない洗剤で洗った肌着が、赤ちゃんや肌の敏感な方に優しいのだろうか。

無添加の洗濯用石けんの洗浄力の低さは、東京家政学院大学紀要「最近の市販洗濯用洗剤の動向 -洗浄力を中心に-(PDF)」(第47号 2007年)でも「アルカリ剤が配合されていない無添加の石けんであるため,極めて低い洗浄率を示したものと思われる」と指摘されている。

石けんが皮膚に優しいのは、すぐに石けんカスになって皮膚に残らない石けんの特性によるもの。
しかし洗濯にとっては、すぐに石けんカスになるようではまずいから、まともな洗濯用の石けんには炭酸塩などの助っ人(助剤・ビルダー)が配合されている。

炭酸塩は、昔は「洗濯ソーダ」としてよく使われ、今でも中華麺のかん水やコンニャクの凝固剤など、食品添加物としても重宝されている。

炭酸塩は、家庭用アルカリ剤の中では、重曹、セスキ炭酸ソーダよりも強力だ。
しかも環境に悪さをしないし、何よりも安い!

そんな炭酸塩を香料や防腐剤と一緒くたにする、許しがたい売り文句だ。

炭酸ソーダ(炭酸塩)の商品ページはこちら。

重質洗剤と軽質洗剤

洗濯に使われる洗剤には重質洗剤と軽質洗剤があります。

重質洗剤は、洗浄力を強くするため水溶液は弱アルカリ性を示す。
木綿、麻、レーヨン、ビニロンおよびナイロンなど弱アルカリ性に耐える繊維を用いた製品で、これらに油汚れや垢汚れなど除去しにくい汚れが多く付着したものを洗浄するために炭酸塩などの助剤(ビルダー)が配合されている。
通常、洗濯機の標準コースで洗う。
価格は安いものが多い。

軽質洗剤は、水溶液は中性。おしゃれ着など汚れの程度が軽いウールや絹を手洗いや洗濯機のドライコースで洗う時に使う。
価格はどういうワケか、高いものが多い。

赤ちゃんの肌着や布おむつの汚れは軽い汚れではない。だから、赤ちゃんの衣類のほとんどが丈夫な綿なのだ。

小さい子どもがいて汚れものが多い家庭には、安価で洗浄力のしっかりした洗濯用洗剤が必須です。

無添加洗濯用石けんの売り文句は、重質洗剤による洗濯は衣類にアルカリが残るから肌によくない、との印象を持たせようとしているようだが、きちんと洗えばアルカリは残らない。多少残ってもクエン酸や酢をごく少量、すすぎの最後に入れればアルカリは中和される。

無添加の石けんを使った方が、汚れやシミがきれいに取り除けなくて衣類に残るだけでなく石けんカスも残る。

だから黄ばんで臭くなる。洗濯槽もカビだらけになる。

汚れをしっかり取り除くためには、無添加の石けんでは力不足だ。

「無添加=優しい」のイメージを悪用した無添加商法にご用心

次回は「09:石けんの特性」です。

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